Research

研究について

CONCEPT

「サイエンスを極め、新技術を開拓する」

私たちの研究の主軸はATP合成酵素の1分子生物物理学です。教科書にある通り、ATP合成酵素は2つの回転分子モーターが結合した分子機械です。私たちは、世界で初めてこの酵素が回転分子モーターであることを実証して以来[1]、そのエネルギー変換メカニズムの解明に取り組んできました[2]。主として光学顕微鏡を用いた回転解析を行いますが、研究のためには考えうるすべての手法を導入し、課題に取り組みます。

新しいサイエンスを切り拓くとき、既存技術では太刀打ちできないことも多く、私たちは自分たちのサイエンスのために新しい技術も開発します。こうして生みだした独自技術の一つが、大きさがミクロン単位で体積が数フェムトリットル(10-15 L)のフェムトリットルリアクタ技術です。これを用いると1分子単位の酵素アッセイも可能であることがわかりました[3]。これを用いて、様々なバイオアッセイを1分子ごとに数え上げる「バイオアッセイのデジタル化」のための工学研究も展開しています。例えば、Digital ELISAが一例です[4]。現在、企業と一緒に本格的な実用化研究にも取り組んでいます。また、ATP合成酵素の部品を使って細胞内ATPを可視化する蛍光タンパク質も開発しました[5]。このATPセンサータンパク質は非常に性能が良いため世界中の研究者に使われており、今でも分与のリクエストがきます*。
また、リアクタ技術を利用した人工細胞リアクタ開発にも取り組んでいます。これは、酵素を高速に進化させるリアクタとして、そして人工的に設計した合成ゲノムの物理シミュレータとして活用することを目指しています。

私たちは、まず好奇心に基づくサイエンスを極めます。その過程で開発した技術は必ず独自技術となります。その特性を見極め、これをきちんと仕上げて皆が使える技術として結実させる。このような研究を通して独創性のある人材育成を実践する。これが我々の研究室のコンセプトです。 *現在、ATPセンサーの開発と応用研究は、元研究員で現在京大准教授の今村博臣博士が推進しています。

1. H.Noji et al., 1997, Nature 386, 299-302
2. H.Noji, H. Ueno, and D.G.G. Duncan, 2016 Biophys. Rev. 9, 103-118
3. Y.Rondelez, et al., 2005 Nat. Biotech. 3, 361-5
4. S.H.Kim, et al., 2012 Lab Chip 12, 4986-4991
5. H.Imamura, et al., 2009 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106, 15651-15656

野地研究室 Single Molecule Biophysics Noji Laboratory