Research

研究について

2005年、F1-ATPaseの1分子解析を目的としてフェムトリットルチャンバーアレイ技術を開発しました[1]。その目的は、この中に1分子のF1-ATPaseを閉じ込めて磁気ピンセットで逆回転し、その際に合成された極少量のATP分子を検出するというものです。
このプロジェクトは「分子チョロQ」と名付けられ、最終的に大成功しました[1]。当時、類似の技術が存在しなかったため、その応用性を調べるために1分子の酵素アッセイを試したところ、こちらも非常にうまくゆき、マイクロ加工技術を用いた1分子酵素アッセイとして初めて成功しました[2]。

その後、より使いやすいデバイスの開発にも成功し[3]、より多数の均一リアクタを簡単に作成することができるようになりました。これがデジタルバイオアッセイの基礎となっています。
デジタルバイオアッセイでは、リアクタの体積が小さいこと、そして検出したいターゲット分子の濃度が低いことを前提としています。
そのような条件でターゲット溶液をフェムトリットルリアクタに封入すると、大部分(90%以上)のリアクタにはターゲット分子は封入されず、残りのリアクタにターゲット分子が1分子毎に封入されます*。この中で蛍光酵素アッセイ**をすると、リアクタからの蛍光信号は「0」と「1」に二値化します。この「1」の信号の回数を数え上げることで酵素の絶対濃度を決定することができます。これがデジタルバイオアッセイの基本的な原理です。

デジタルアッセイは、これまでの分析化学にはない新発想の分析技術です。原理が単純であるため応用できる範囲が極めて広く、今後バイオ分析の一つのスタンダードになると確信しています。既にDigital ELISA[4]は国際企業と本格的な実用化研究を進めていますが、それ以外のバイオアッセイもデジタル化しることで、バイオ分析のデジタル革命とも呼べる潮流を生み出したいと考えています[5]。 *確率的に2個以上の場合もありますが、濃度が低い時は無視できる確率です。
**反応によって蛍光を発するフルオロジェックアッセイ基質を酵素分子と一緒に封入し、酵素反応を蛍光強度で検出します。

1. Y.Rondelez, et al., 2005 Nature 433, 773-777
2. Y.Rondelez, et al., 2005 Nat. Biotech. 3, 361-365
3. S.Sakakihara, et al., 2010 Lab Chip 10, 3355-3362
4. S.H.Kim, et al., 2012 Lab Chip 12, 4986-4991
5. 現代化学 シリーズ「デジタルバイオ分析」(2016年4月号−11月号連載)

野地研究室 Single Molecule Biophysics Noji Laboratory